捨てた女が忘れられずに
俺は今夜も街を彷徨う
二人で歩いた街の灯りも
なぜか今夜は寂しく暗く
涙で霞んだ俺の瞳に
夜霧のように淀んで映る
何故に何故に俺はあいつを
訳もないのに捨てたのだろう
俺は本当は好きだったのに
ああ・・・
俺は本当に馬鹿な男さ
*
捨てたあいつを思い出しては
俺は一人で街を彷徨う
二人で入った店の飾りも
何故か今夜はくすんで見えて
涙に濡れた俺の心に
つららのように冷たく刺さる
何故に何故に俺はあいつを
紙屑みたいに捨てたのだろう
俺は本当は好きだったのに
ああ・・・
俺は本当に馬鹿な男さ
(73/12/27)
愛という思いのせつなさが
わたしにはわかるの昨日の夜から
たった一度のくちづけだけで
あんなに胸が震えるなんて
ああ わたしはもう恋のとりこ
*
愛という思いの不思議さが
わたしにはわかったの昨夜のことから
たった一度抱かれただけで
こんなに全てが変わるなんて
ああ わたしはもう恋する女
*
愛という思いの苦しさが
わたしにはわかるの昨日の日から
たった一晩別れただけで
こんなにあなたが恋しいなんて
ああ わたしはもうあなたのとりこ
(73/12/6)
夜明けの空が茜に染まるころ
わたしはこっそりデートに行くの
人影見えない街並抜けて
あの人の待つ
お城へ急ぐ
*
あの人いつでもわたしを見つけると
合図の草笛小さく鳴らすの
それから二人は手を取り合って
夜明けの小道をそぞろ歩くの
*
夜明けのデートは素敵なデート
誰も知らない二人の秘密
いつかしみじみ思い出すでしょ
夜明けのデートと甘いくちづけ
(73)
さよならさえ言わないうちに
通り風のように過ぎ去ったひとよ
色づいた山の湖に
夏の日の面影はないけれど
独り乗るボートに
君の思い出がせつなくて
独り乗るボートに
君の思い出がせつなくて
*
イニシャルさえ聞かないうちに
かげろうのように消え去ったひとよ
人気ないテニスコートに
夏の日のざわめきはないけれど
独りたたずむコートに
君の思い出がせつなくて
独りたたずむコートに
君の思い出がせつなくて
*
好きだとさえ言わないうちに
旅人のように立ち去ったひとよ
落葉松林を抜ける風に
夏の日の芳ばしさはないけれど
独り歩む小径に
君の思い出がせつなくて
独り歩む小径に
君の思い出がせつなくて
(74/1/7)
あの人のことなら聞かせて欲しい
今でも元気にしてるのかしら
そんな仲ではなかったけれど
忘れられない人だった
今でも変わってないかしら
冷たいようでやさしいところ
わたしのことなら黙っていてね
こんなわたしじゃ会いたくないの
*
あの人のことなら話して欲しい
今でも独りでいるのかしら
そんな間じゃなかったけれど
心に残る人だった
今でも変わってないかしら
ちょっとくずれた話し方
わたしのことなら黙っていてね
こんなわたしじゃ会いたくないの
*
あの人のことなら教えて欲しい
今でもあそこにいるのかしら
そんなつもりじゃなかったけれど
心引かれる人だった
今でも変わってないかしら
目許で笑う笑い方
わたしのことなら黙っていてね
こんなわたしじゃ会いたくないの
(74/1/10)
夜の新宿盛り場の
最終電車を待ちながら
酔った顔して心の中じゃ
泣いているのよこのわたし
こんなものねと言えるほど
世の中わかっちゃいないけど
一度狂った人生の
道はどこまで狂うやら
*
夜の新宿酒臭い
プラットフォームにたたずんで
化粧崩れを気にする振りで
目頭押さえるこのわたし
こんなものねと言えるほど
世の中知っちゃいないけど
一度迷った人生の
道はどこまで茨道
*
夜の新宿灯りも消えて
最終電車のベルが鳴る
酔った男の絡まれて
よしてと言えないこのわたし
こんなものねと言えるほど
世の中わかっちゃいないけど
一度外した人生の
道はいつまで暗いやら
(74/1/11)
泣いちゃ駄目よと慰めながら
泣いているのはあなたじゃないの
恋をなくした女が二人
肩寄せ合って涙にくれて
冷たい運命(さだめ)に震えてる
雪の降る夜北国の町
*
元気を出してと励ましながら
泣いているのはあなたじゃないの
幸せ薄い女が二人
肩抱き合って途方にくれて
消えた望みにすがってる
夢さえ凍る北国の夜
*
生きなきゃ駄目よと強がりながら
泣いているのはあなたじゃないの
愛をなくした女が二人
手を取り合って胸詰まらせて
破れた夢を追っている
雪降り止まぬ北国の夜
(74/1/14)
世の中景気は良くないが
ボーナスはたいて買いました
ロンドン仕立てのニューコート
ガールハントは大成功
それでもなんだか物足りない
何かない面白いこと
*
恋人同志じゃないけれど
モテルへ一緒に行きました
回転ベッドに鏡風呂
ポルノ顔負けビデオ撮り
それでもなんだか物足りない
何かない面白いこと
*
競馬ファンではないけれど
馬券を十枚買いました
十枚全部万馬券
夜が明けるまで馬鹿騒ぎ
それでもなんだか
物足りない
何かない面白いこと
(74/1/8)
夢を夢を見まいとする心
寂しい、叫びたいほど寂しいの
二度と二度と恋などするものか
いまさら愛など語るまい
ああ 命を賭けた
恋を亡くした喪中の女
*
窓を窓を閉ざそうとする心
苦しい、叫びたいほど苦しいの
二度と二度と星など見るものか
いまさら心を開くまい
ああ 女を賭けた
恋を亡くした喪中の女
*
望みを望みを捨てようとする心
空しい、叫びたいほど空しいの
二度と二度と好きなど言うものか
いまさら心を明かすまい
ああ 全てを賭けた
恋を亡くした喪中の女
(74/1/13)
木枯らしが窓ガラスを打つ
狭い下宿の一室
頼る人もなくただ独り
風邪で臥せっていたわたし
あの人が突然訪ねてきて
慣れぬ手つきで作ってくれた
あの一杯の鍋焼うどん
いまでもあのときが忘れられない
*
あの人が野菜を刻む
青いカーテンの向こう
何を思うでもなくぼんやりと
天井を見上げていたわたし
あの人が突然顔を出して
慣れぬ手つきで並べてくれた
あの一杯の鍋焼うどん
いまでもあの湯気が忘れられない
*
白いバラが彩り添える
丸い小さなちゃぶだい
ガウンを掛けて起き上がり
彼の前に座ったわたし
涙が突然溢れてきて
熱いおつゆと一緒にすすった
あの一杯の鍋焼うどん
いまでもあの味が忘れられない
(94/1/17)
霧が流れるセーヌのほとり
ひとりたたずんでいたわたし
ふと見交わした瞳と瞳
あの人との出合だった
*
木の葉が舞い散るブローニュの森
じっと手を取り合っていたふたり
ふと通い合う心と心
あの人とのなれそめだった
*
雨にけぶるモンマントル
そっとくちづけを交したふたり
ふと黙り込む言葉と言葉
あの人との夜明けだった
*
風が強い飛行場
そっと手を握り合っているふたり
ふとこみあげる涙と涙
あの人との別れだった
*
逢えるわねいつかまた
Non pas adieu,mais au revoir,mon ami.
Non pas adieu,mais au revoir,mon ami.
(74/1/17)
ヨーデルが聞こえるでしょう
黒い髪のお嬢さん
あの切り立つ山がモンブラン
スキーですか山登ですか
それともわたしとデートはいかが
知り合うまでは誰でも他人
これをご縁に仲良くどうぞ
イエラルヒーイエラルヒー
イエイエイエイエイエラルヒー
*
羊の鈴が聞こえるでしょう
黒い瞳のお嬢さん
あの澄切った水がレマン湖
素通りですか観光ですか
それともわたしとデートはいかが
知り合うまでは誰でも他人
ここで会ったが知り合うチャンス
イエラルヒーイエラルヒー
イエイエイエイエイエラルヒー
*
鐘の音が聞こえるでしょう
遠い国のお嬢さん
あのそびえる塔がピェール寺院
ドライブですかショッピングですか
それとも二人でデートはいかが
知り合うまでは誰でも他人
明日になれば恋人同志
イエラルヒーイエラルヒー
イエイエイエイエイエラルヒー
(74/1/17)
あの娘はぼくを裏切った
死ぬほど愛したこのぼくを
あんな男のどこがいい
格好だけはいかすけど
ハートがないのさあいつには
ああ、痛いぼくの胸
いつになったら直るだろう
*
あの娘はぼくを裏切った
殺してやりたいあの娘を
人の見ている目の前で
ベルトも服も剥ぎ取って
裏切りものと叫びつつ
ああ、痛いぼくの胸
いつになったら癒えるだろう
*
あの娘はぼくを裏切った
だけどぼくには殺せない
たとえあの娘が目の前で
あいつとくちづけしようとも
勇気がないのさこのぼくにゃ
ああ、痛いぼくの胸
きっと死ぬまで痛むだろう
(74/1/17)