1997/12/9:新しく、フォーラムでいただいた自作への感想を掲載しました。
第50回たまには歌句会(97/11)
第49回たまには歌句会(97/10)
第48回たまには歌句会(97/9)
第47回たまには歌句会(97/8)
第46回たまには歌句会(97/7)
第45回たまには歌句会(97/6)
第44回たまには歌句会(97/5)
第43回たまには歌句会(97/4)
第42回たまには歌句会(97/3)
第41回たまには歌句会(97/2)
第40回たまには歌句会(97/1)
第39回たまには歌句会(96/12)
第38回たまには歌句会(96/11)
目次
【和歌部門】
故知らぬ不安に日夜囚わるを新たな脱皮の兆しであれと(2)
妖精と言われし女優老いて逝き我が身に照らし老いを考がう(1)
寒暖の差は激しくて体調の勝れぬままに七月半ば
【俳句部門】
ひと突きに過去巡らせる心太(2)
干し梅のどこからともなき匂いかな(2)
暑さゆえ冷気厳しき山の朝
【川柳部門】
忘れては困ることだけよく忘れ(3)
公約が膏薬ほども効くならば(1)
【和歌部門】
山道を行けば大雨逃げ込みし古木と昔の時間を過ごす(4)
古ランプ灯せる店でロック聞く午後のコーヒーそうブラックで(1)
浜風に誘われ翼を広げればふわり世間の憂さとサヨナラ
【俳句部門】
梅雨寒に目覚め病みたる父想う(1)
万緑に染まりし池や枯れ立木 (1)
庭いじる老夫婦あり雪の下
【川柳部門】
一生を五合で振りしが癪(しゃく)の種(3)
外れないはずを外して恥ずかしや (1)
第57回たまには歌句会(98/6)感想へ
我思う故に我あり思わざる月日重ねて我影法師 (1)
山霧にたちまち視界覆われて三寸先を手探りで行く(1)
窓覆うほどに繁りし蔓バラに隠れて君の肢体を盗む
【俳句部門】
狭き門分かちて薔薇と筋向かい(2)
新緑の書き改めし森の線 (5)
御柱(おんばしら)祭り木遣りの師に付きぬ
【川柳部門】
他所行きに装い妻のよそよそし(4)
護送船気付いてみれば誤送船(1)
百打てど当たらぬ下手の水鉄砲 (1)
第56回たまには歌句会(98/5)感想へ
【和歌部門】
鹿の瞳(め)は虚ろのようで生き物の哀しみ湛えているようでもある(3)
夜な夜なに怪しきメールとり交わすバーチャル・ラブの秘めし愉しみ
海外へ旅たつ夜はなんとなく心忙しく歌など詠めず
【俳句部門】
自若たる千年桜や甲斐の里
雨恨みうつむきかげん八重桜(3)
ふっくらとそこにはまりし春少女(3)
【川柳部門】
餌台の鳥影消えて閑古鳥
すぐ切れてすぐむかついてすぐナイフ(3)
吹き抜けを風吹き抜けるバブル後(1)
【和歌部門】
魂の闇と向き合う午前二時無言電話のなぜか親しき(1)
涙など見せるつもりはないけれど金メダルにはほろりとしてね(1)
優しげな君の瞳はわが生を破滅にいざなう罠にして奥に地獄の炎ほの見ゆ
【俳句部門】
大鳩に訪われ小梅は花散らす(1)
一休み上がりかまちのチューリップ
浅き春霞む西湖に湖人なく(1)
【川柳部門】
礼遇と言うは大抵冷遇だ
車椅子通せんぼする道ばかり(2)
席立てど坐ってもらえず立つ瀬なし(3)
第54回たまには歌句会(98/3)感想へ
【和歌部門】
考えるそのこと自体おっくうで座禅法師のように端座す
吹く風のありやなしやのぬくもりは春のきざしや足音弾む
ぼつねんと世の片隅に身を臥して半眼のまま世情憂える
【俳句部門】
自在なる書家の筆法枯れ蓮(はちす)(1)
四十雀アクロバットす冬日和
冬日没(お)ちなお照り映える飛行雲
【川柳部門】
良く滑りゃ五輪金賞我三浪 (2)
蜘蛛の句も苦もなく出来て雲晴れる(2)
政官界定番出し物大暗ショー (1)
【和歌部門】
喪ないし過去より届きし年賀状懐かしげなる添え書き訝し(1)
酒食らい気宇壮大の歌詠まん意気揚げながらやがて酩酊
餌台の手慣れし顔の四十雀見守りながら落花生剥く
【俳句部門】
大雪や背中丸めて独り酒
さるすべり枝振りのまま雪の花(3)
ひとり笑う己に気付きし寒さかな(2)
【川柳部門】
避けがたい酒を避けたら仲が裂け(4)
そのうちにいつまでたってもそのうちに(3)
聖火消えて五輪人気に火をつける (2)
【和歌部門】
千年の森の大樹の懐かしき我が始祖の血の目覚めたるかや(5点)
哀しみは時雨に濡れて光りおる石畳に似て固く冷たし (1点)
夜ごと見る夢は切なし取り戻す術なき日々に夢を追う我
【和歌部門】
一年の癒し柚子香の仕舞い風呂 (1点)
仙菱と万両競う軒端かな
山茶花は石灯篭の灯のごとく
【川柳部門】
株下がり総理無策で株を下げ(4点)
凶器持つ狂気のテロに侠気なし (3点)
【和歌部門】
しみじみと鏡の中の自らを見れば見知らぬ人の貌あり(2点)
あが命慈しみたき夜のありてかすけき鼓動に聞き耳をたつ (トップ賞 ,4 点)
香りよきミルクコーヒーゆったりと味わい飲めば満ちて来るもの (2点)
【俳句部門】
ピラカンサいよいよ赤くひよ叫ぶ (3点)
餌台をからみとりたる蔦紅葉 (2点)
ふるさとの香りと添えて柚子届く
【川柳部門】
規制緩和気勢殺がれてもうあかんわ (3点 )
ビッグバン前にビッグなバン続く
甘い汁吸ううちガードも甘くなる (1点)
第50回たまには歌句会感想へ
【和歌部門】
ジューシーになったね君は食べ頃の桃よりもっと食い気誘うよ
ドア開ける前に辺りをうかがって人目なくても午後の逢引
むらむらと良くない気持ち引き出して作戦勝ちだよ君のふるまい
【俳句部門】
わだかまりつかえしままに秋深む(5)
懐かしき色響き合う紅葉谷(2)
秋の灯を分かちて妻と山の宿(2)
【川柳部門】
管を巻き酔いから醒めて尻尾巻く(トップ賞、5)
神棚も設けぬ人の神頼み
堤灯を持つ人持っても欲しい人
【和歌部門】
木々わたる風しょうしょうとぬるま湯に浸かりて深夜眼閉ずれば(2)
家と塀狭き隙間に生いし果樹とりどりに実を稔らせて秋
街中に独り残れる大木の刈りこまれたる痛々しき様
【俳句部門】
良き朝と言うべし樹下に露光る(2)
雨だれの絶え間に虫の声湧きぬ(1)
夏の行く日や雨だれの絶え間なく
【川柳部門】
大証券クローンもどきの御体質(3)
変えるべき変えられることほど変えにくい(2)
会社ごと牢屋につなぐ法がいる(1)
第48回たまには歌句会感想へ
夏の街いずこも白き熱帯びて物みな歪みわが影を揺る(4)
掘り起こす砂塵を夕日が朱に染めて砂漠の猫はさそりを捕らう(2)
はからずも時代の神話伝説の成立現場に立ち会う愉快(1)
【俳句部門】
新涼のビールの喉を鳴らしけり
海の面にプカリくらげの残暑かな(2)
初咲きにして凌霄(のうぜん)花庭を統ぶ(1)
【川柳部門】
面白くない日に焼けず面白く(2)
詰まらないほうがいいのはパイプだけ
【和歌部門】
あご髭を生やせし若者気負いなく若き女性と手を取りあいて行く
子ら家を出でて歯ブラシ二本きり新婚当初と数だけ同じ(4)
瞑想のBGMに溶けてゆく暑き夏の日暮れゆくほどに(2)
【俳句部門】
黒揚羽濃き木陰より身を放つ(2)
青柿は葉陰に潜み雨止まず(4、トップ賞)
去年(こぞ)も見しやもりや窓に白き腹
【川柳部門】
我がふりは直さず人のふり直す(6、トップ賞)
身から出た錆びゆえ落とせば身が細る(3)
取締役は取り締まられる役(2)
筆まめの父の返事の二度も来ずこのまま二度と来ぬかと案ず(2)
瀬戸際の命削りて文くれし父の筆致になお力あり(2)
ビロードの肌紅の薔薇一輪見つめるほどに引き込まれ行く(2)
【俳句部門】
湧き水に揺れ透き通るところてん(3)
夏の濠白鳥離れ離れなり
詠み人の心見返す薔薇一輪(3)
【川柳部門】
こんなはずなかったはずがまた外れ
無い物が無ければ無いで物足りない(1)
大振りの枝下ろされし大木の切り口白し万緑の中(5,次点)
病床の父慰める言の葉はもはや尽きたりひたすら祈る(2)
半世紀生きた証や身辺の調度はなべて老犬の貌(3)
【俳句部門】
薔薇眠る木立の陰の昼下がり(2)
ところ得て庭木それぞれの初夏の朝(3)
さえずりのけたたましくて行く春ぞ(1)
【川柳部門】
親分が社長ゆすりが運用益
浮かぬ顔浮かべ伺ううかつ者(2)
40年振れど4歳児に勝てず(2)
【和歌部門】
冬鳥の去りにし沼はただ広く淡き緑に鈍く光れり(4)
ホール中溢るる優しき楽の音に安らぎゆきていつかまどろむ
路の辺に小さきたんぽぽ幼子のしゃがみて見つむ話しかくごと(3)
【俳句部門】
ほうき星求め歩けば春おぼろ
花冷えや宴のござの白光り (1)
日はたゆたい家居のどかに柿若葉 (2)
【川柳部門】
高官の最後のお勤め塀の中 (2)
高い金払ってグッスリ演奏会(2)
青い目も驚けば目を白黒に (2)
枕辺に終夜優しき雨音の庭木慈しむごとく響けり (4、トップ賞)
悔しさを噛みしめているの?唇の両端をぐいと曲げているのは(2)
楽章の間の深き静けさよ眼を閉じて全身浸る(1)
【俳句部門】
木の芽吹く庭の賑わい目が笑う
春眠の勢い止まず夢に夢 (1)
歌姫の声涼やかに春の宵(2)
【川柳部門】
憎まれ口先に覚えて子は育ち (3)
誇りなく叩けばホコリの官ばかり(1)
割引券貰って要らない物を買い
柔らかき水の流れにゆだねればこの身の魚のごとき軽ろさよ(3)
あれやこれやるべきはずのことどもを忘れしままに時は過ぎゆく
亡き母の顔鮮やかに浮かびたり愛唱されし歌ふと口ずさみ
【俳句部門】
眼閉ずれば雪降りしきるなお繁く
黄昏の町の寒鯉動かざる(3)
寒月の谷あいの町染め尽くす(1)
【川柳部門】
妙えぬ音も絶えぬとなると耐えられぬ(1)
肩書きの後光に縋る退任後(1)
湯煙は暗き夜空にかき消えてただ音もなく風花の舞う(トップ賞、6点)
月に吠える犬にも似たりわが生の行く末想い天を仰げば(2点)
静寂に聴き惚れている喧騒の都会逃れて秘湯にあれば (2点)
【俳句部門】
元旦や身を引き締めて初滑り(その他)
三が日滑り通して山近し(その他)
漆黒の闇をのたくる甲斐おろし(その他)
【川柳部門】
二枚舌標準装備政官界 (3点)
健康法流行(ハヤリ)追いかけ不健康 (1点)
人を食う人人一倍人を呑む
のすり翔ぶ風強き日の富士山の全山覆う雪のまぶしさ (1点)
今ここにいる本と絵に埋もれて長き歳月かけしたくらみ (1点)
曰く言いがたき数々長年の夫婦の心の底に澱みぬ (その他)
【俳句部門】
冬至湯の湯気に影あり動かざる(1点句)
日輪の枯野を焦がし沈み行く (1点句)
のすり舞う空の蒼きに富士の雪 (その他句)
【川柳部門】
割り込みの常習他人には断固拒否 (2点)
にわとりの二羽いる庭のにわか雨 (その他)
じわじわとわれの内部で壊れゆくものあり止める術もなきまま(3点)
岩風呂の湯は透き通り岩肌の色とりどりに裸体に揺れる(その他)
【俳句部門】
銀杏敷く径生臭き夕時雨(1点句)
餌台を清めて冬の庭となす(3点句)
おそれたる湯冷めしたらし夜は深々(その他句)
【川柳部門】
「出て行け」と怒鳴るつもりが「出て行くよ」(4点;トップ賞)
自らの更生が先厚生省(3点)
人脈と言われる金を手繰る網 (その他)
湯煙は暗き夜空にかき消えてただ音もなく風花の舞う(第40回)
あが命慈しみたき夜のありてかすけき鼓動に聞き耳をたつ
(第50回)
管を巻き酔いから醒めて尻尾巻く(第49回)
行く春やしばし堤の風に乗る(3)
花冷えやセーター温し岸の風(1)
花曇りいきなり鳥の影よぎる
注:カッコ内は投票数
和歌部門
切なさを胸に秘めてや水鳥の羽根打ちすぼめ蘆陰に潜む(2)
梅雨さなか空晴れ渡る南国のコバルト色の海のやすらぎ (2)
妻に負う旅のさなかの安らぎを毀すべけんや言葉を濁す
俳句部門
ゆるやかに時は巡るや苔の花(4)
砕け落つ溶岩ドームや五月闇 (2)
梅雨晴れて日差しはまぶし花菖蒲
和歌部門
闇深き野中に立つや一本の大樹ざわめき吾に呼び掛く(3)
虚ろなる心淋しも音もなく日長降る雨飽きることなし(3)
燃やさんとしてなお燃えぬ胸底の燠よせめては絶えねと念ず(1)
俳句部門
雨上がる森の匂うや月涼し(2)
苔清水百万年の滴りや(1)
沙羅の花ただ一輪の庭涼し
川柳部門
雨降って地固まらず流される(4)
にわか雨歩こう組と走る組(4)
もやもやも野茂の快挙でノーモアー (2)
ことさらに淋しき夜は蕗の葉の太き雨音慰めとする(7)
つかみどころなきわだかまり胸底に降り止まぬ雨じっと見つめる(3)
大空に音舞い上がり茜さす雲とたなびきステージ覆う
俳句部門
雪渓を踏む跫音に嶽(やま)応う(3)
しみじみとチェロ懐かしき夏の朝
夕暮れてハマナスばかり北の果て
川柳部門
夢抱け夢だけ抱き早や定年(5)
ずる休みするほどずるになれぬずる(2)
学歴があるほどカルトに寄りかかる
まどろみつ虫の音聞けばふるさとの庭に立ちおり亡母もおわす(5)
風うなり波涛は叫ぶ闇の礒しぶきにまみれつ心躍らす(2)
満天の星を仰ぎつ妻ともに異境の秋の旅愁に浸る
俳句部門
小さき花小さきままに花野かな(6)
秋立つやどこぞなじみの虫の声 (1)
花野来て老いも手を取り高台に
川柳部門
屁理屈と決めつけて来る屁理屈屋 (3)
酷暑でも行く夏惜しむ人もいる(1)
湯の宿も寝静まりたり瀬の音を聞くは我のみ妻の寝息す(3)
大切なもの忘れたる感覚にふととらわれて後振り返る(1)
三人の友の急死に遭いし年秋深まりて虫の音かぼそし
俳句部門
コスモスの揺れて懐かし白き壁(3)
絵に描きし草花枯れて秋深む(2)
夜は更けて秋風鈴の狂おしく(1)
川柳部門
酒好きで昔飛ぶ鳥今千鳥(3)
ボケまいとし過ぎてボケる前に死に(2)
有名税払うつもりでヘアを出し
ガラス越し音なく噴き上ぐ噴水の白きもこもこ二十かそこら
絵筆擱き遠目に眺めつふむふむと想練るときや心愉しも
無窮へとつながりおるや睦み合う女体の奥の奥の暗闇
俳句部門
小春日の本堂閑として七七日(1)
芋の葉に揺れる大きな月の影
落人も食べしと笊盛り茸飯
川柳部門
薄命のはずの美貌で妻元気(6)
「頭悪い」と機密漏らして首になり(4)
大物は失脚してもなお威張り(2)
水鳥の漂う影の黒々ときらめく湖の波のまにまに(3)
冬枯れの梢に細き月の影輝き増しつつ師走暮れゆく(2)
木漏れ日の落ち葉温む小春日ののどけき疎林日永さまよう (1)
俳句部門
娘嫁しふと気付きたる十二月(4)
我のほか風と鴎の冬の海 (1)
日傾き月は薄目に冬木立(1)
川柳部門
生き抜こうとすると何かが抜け落ちる(3)
生きるため命縮めて苦吟する
淡彩の生描き来て原色を塗りたき衝動胸を突き上ぐ(トップ賞、7)
つかの間に逢いし女なれど生命に直に触れたるときめき残す(2)
恒産も恒心もなき我が生の行く末照らす夜半の寒月(1)
俳句部門
冬枯れの野に雉一羽艶めけり(2)
雪の夜の猫鳴く声の遠きかな(1)
川柳部門
締め切りがこなけりゃ書けぬとプロ気取り(3)
素顔見え鏡に当たる厚化粧(3)
据え膳と食ってる最中黒メガネ
思いつめかけし電話の呼び鈴の君なき部屋にむなしく響く(3)
時の過ぎる音の聞こえし気になりて歩み停めれば遠き潮騒 (2)
夜の底に沈みし我の小さきをじっと見下ろす眼のありき(1)
俳句部門
ヒヨ啼ける朝心地よき寒気かな (1)
心音の震え抱きしむ寒夜かな(1)
雪積もりし梅のつぼみの紅さかな
川柳部門
お互いに傷持つ身なればそっと吹き(1)
春立てど路面凍結我立てず (1)
同じ楽器(もの)弾いたと思えぬアマとプロ
無為のうちはや黄昏るる春の日を胸塞がれてそっと見送る(2)
寝過ごしと思い慌てて手探れば目覚まし正に鳴り始めたり(1)
寝不足の果ての深酒両眼を閉ずより早く宇宙遊泳(1)
俳句部門
ここに我立たずとも佳き春の里 (2)
春弥生聞き耳を立て野を歩く(1)
雪解水澄めど冷たや蕗の薹
川柳部門
ネンコロリ先に寝た母子があやし(2)
座り込み用だったのか赤絨毯 (2)
「いまさら」を「いまから」に変え五十六(1)
艶めける女体のごとき文体で水都留めし詩に酔わされる
いつかその日は巡り来る理に今日と言う日に思い至りぬ
振り返る日は来るべしと思いしもその日来ぬまま我が生流る
俳句部門
花びらに敷き詰められて池のたり
春雨を心得顔の蝦蟇が行く
片思い諦めかねて花曇り
川柳部門
子育むはずの「母体」で悪育て
揚げ足を取ろうと出した手を噛まれ
慣行と観光敢行官公庁
ものはみな移り過ぎ行きこのセピア色の写真のちちはは若し
連休の最中に若き友の逝き生の危うさわが身に染みぬ
目もあやな緑布織りなし嶺々は霞む先まで春の装い
俳句部門
肌寒き初夏にてじっと痩せ蛙
春の夜の屋上プールの若やぎて
君が瞳の若葉さやけきブナ林
川柳部門
一角の人と言うには角がある
人間が来て森を焼き野を拓きシマフクロウは密やかに飛ぶ
風通るたびにドアの開閉しけだるき夏の夕忍び寄る
意志のあるごとく大河は山野縫い流域民族のいのち潤す
俳句部門
花石榴こぼれて笹の咲きしごと
せせらぎの響き蛍の闇に和す
ボール打つかいなまぶしも夾竹桃
川柳部門
飽きないで空きないぐらいが良い商い
ツケ回し付け回されたお役人
思わざる不祥事思わざる人が首
出逢うたび深まる思い眼に込めて見やれど素知らぬふりで行く女
意志越ゆる力に牽かれ渡り行く鳥いとおしき満月の夜
人生の愉悦知りたる顔つきで幼な子炎天下水遊びする
俳句部門
九生の猫忍び入る夏の闇
苦吟せし句を忘れたり合歓の花
雪渓に眼射られし尾根伝い
川柳部門
明日吹く風も逆風アトランタ
雨降らば溢れ降らねば水不足
塾はしごサボるこつのみ熟達し
外つ国の旅の間に伸びし爪切らんとすればすだく虫の音
両岸の緑に染みし水面は眼の前にありカヌーを漕げば
聳え立つ大樹の森のその上を風と戯れトビは輪舞す
俳句部門
手を延べて吾児が教えし虹の橋
帰国せし日の新涼や胸を撫づ
新涼の朝に鳴く蝉すぐ止みぬ
川柳部門
満席で詫びられながら上席へ
間に合わせきかぬ時差ボケ締め切り日
日本人同士で「ソーリー」帰国便
われ食みしものの命とわが命月夜に孵る海亀の子ら(5)
今そこにいる人敢えてその場所を自ら選びしものにあらずや (2)
小さき手で乳房探りし子の逝きてその感触も母にはつらし(1)
俳句部門
枝すきし庭透き透きと秋の雲(3)
腰痛めプール歩くや曼珠沙華(1)
風雨荒れ喉も嗄れよと四十雀
川柳部門
「馬鹿やろ」と出かかったのを「馬鹿でした」 (4,トップ賞)
幸福観身丈に合って幸福感 (2)
親バカになれない親はバカ親だ
ゆらゆらと日にかげろいて水際を薄羽カゲロウ飛べる危うさ
わが胸の奥なるところゆえもなき寂寥ありて今日もさびしも
この歩む楽しみさえも失う日やがて来るべし歩を踏みしめる
俳句部門
へたばってひっくり返れば柿一つ
コスモスに埋もれて遠き雲を呼ぶ
川柳部門
荒天が一転好転好天気
やり過ごし胸を撫でたら鉢合せ