またも、小林泉美三段がやってくれましたね。NHK杯で、天下の力戦家宮沢吾郎九段を相手に白番で5目半の勝ち(1989/8/9放映)。お見事の一語に尽きます。
終盤まで、劣勢の碁を、狙いすましたコウで見事逆転。これは、解説の小林覚九段も気が付かなかった筋で、さすがに勝負強いところは、最近再婚したばかりの父親、小林光一九段譲り。
女性陣が、なんとなく回しに手が届かないような負け方で次々と姿を消し、残る頼みは昨年も二段ながら二人の九段を血祭りに挙げ、武宮九段戦でもコウ立てを聴かずにコウをぶち抜けば勝っていたというところまで追い詰めた小林泉美三段一人だけだったが、その期待に応えての勝利、次の山城九段戦が楽しみになってきました。二度有ることが三度も四度もあって欲しいものですね。本人は三段に昇段したばかりの弱冠21歳の女性。こんな晴れの舞台で、天下の九段を相手に一歩も退かず、逆転で負かすのですから、勝負度胸にも恐れ入ります。がんばれ泉美さん!
碁聖戦は、依田碁聖が3-0で防衛。
挑戦者の苑田九段も初戦は、不出来だったが、二戦、三戦と調子を上げて来たので、もうすこしもつれるかと期待されたものの、やや勝負の詰めが甘く、その点は人一倍辛い依田碁聖に三立てを食ってしまった。依田三連覇。依田碁聖も、年頭の棋聖戦では、趙治勲大三冠にやられている。名人戦は王立誠に挑戦権を奪われたから、碁聖のタイトルぐらいで甘んずることなく、棋聖戦に連続挑戦し、棋聖を奪取するつもりで頑張って欲しいものだ。
本因坊戦、趙治勲、不滅の10連覇
先にも、勝率が9割に近く「7番勝負の鬼といわれる趙治勲が、今回は10連覇にこだわって勝ちに行くと宣言しているというから、簡単に土俵割るとは思えない」と書いたのだが、やはり強かった。4-2。予定通りの星取表ではないだろうか。
まずもって、おめでとうと申し上げたい。
立会人の坂田名誉本因坊が、10連覇達成後の打ち上げの席上で「治勲はずるいよ。負け方を知っていて、ついその気にさせちゃうのだから」という趣旨のことを言ったと伝えられているが、まさに正鵠を得ている。うまく負けてやり、その気にさせて、勝ちにきたところを、ごつんと叩くのだ。相手の受ける衝撃は二倍にも三倍にもなる。徹底的に打ちのめされる。勝てそうで勝てないと自ら転ぶことにもなる。
今回も安全運転で、主催社側に顔の立つ6局まで打って、予定通り防衛を達成した、ようにさえ見える。こうなると、高川秀格の9連覇と坂田栄男の7連覇を合わせた16連覇を狙うという趙治勲の言葉が満更大風呂敷ではないように思えてくる。
名人戦も、同じ王立誠が挑戦することに決まった。果たして、今回の戦いの学習効果で、治勲を追い詰めるところまで、行けるだろうか。
碁聖戦5番勝負は、依田碁聖が2-0と、挑戦者の苑田九段を圧倒している。勝負に辛い依田が有利と見る。
日本棋院中部総本部に属する彦坂直人九段が、十段戦初挑戦で見事、加藤正夫九段を破って、初のビッグタイトルを獲得しましたね。見るからに、神経の太そうなタイプの棋士で、大舞台でも、決して物おじしないところが、今回のタイトル獲得に繋がったように思える。これで、先にも書いたようにG7と言われるタイトル戦の常連の一角を、山田規三夫王座とともに、突き崩したわけで、これでタイトルが東京5、名古屋1、大阪1と分散することになった。
いよいよ本因坊戦挑戦手合いが始まる
その東京5つのうち、3つ、しかも三大タイトルを2年連続して独占するのが趙治勲大三冠。本因坊戦のタイトル挑戦手合いがいよいよ始まる。今回は前人未到の10連破をかけて王立誠九段の挑戦を受ける。王立誠はこのところ好調で、名人戦リーグでも5戦全勝で、トップを走っている。趙治勲にも勝ち越しているし、王座戦で趙治勲からタイトルをダッシュしたこともある。とにかく7番勝負の鬼といわれる治勲が、今回は10 連覇にこだわって勝ちに行くと宣言しているというから、簡単に土俵割るとは思えないが、棋聖戦の依田碁聖のように回しに手が届かないようなことにならないように、王立誠九段の肉薄に期待したい。
日中天元戦、日本7連敗
日中天元戦は、工藤紀夫天元が善戦したにもかかわらず中国の若きエース常天元に0-2で破れ、これで対中国戦七連敗。日中のタイトルホルダー同士の対決で、このところほとんどが日本側の負け。世界と冠した棋戦でもふるわず、韓国、中国の後塵を拝している。すぐハングリー精神が足りないの、国際棋戦は時間が短いのといった言い訳じみた評論がされるが、いまどきハングリー精神だけで勝ったり負けたりするものでもあるまい。はっきり弱さを認め、根本的な対策を考えないと、国内の対局が弱い者同士の戦いを見せられているようで、興味を削ぐ。サッカーにしても、ワールドカップのレベルの試合を見慣れるとJリーグが物足りなくなって来るようなものだ。国内にも世界にオープンなリーグ戦を設けて、長時間戦での外国人と日本人棋士の実力を試してみてはどうだろう。外国選手を入れて、Jリーグの試合も見栄えのするものになってきたのだ。
1998/3/3
依田碁聖、2-3と盛り返して棋聖戦佳境へ。彦坂直人九段、十段戦の挑戦者に登場
天下の大三冠が3-0と一方的にリードしたときは、もはやこれまでかと思ったが、案に相違して依田碁聖がカド番から二連勝して棋聖戦も一挙に盛り上がった。カド番で吹っ切れたのか依田碁聖の着手が伸び伸びしてきた。3〜5局ともきわめて短手数で終わっているところが、激戦ぶりを物語っている。
7番碁の鬼といわれる趙治勲のことだから、4、5局は相手の様子を見たまでで帳尻はきちんと合わせて来るようにも見えるが、そこをなんとか突破して欲しい。それ以外に、活路はない。少なくとも7局目まで行ってもらいたいものだ。
ところで中部総本部の彦坂直人九段が、その趙治勲を決勝で破って十段戦の挑戦者に躍り出てきた。このところ力を付けてきて、好調なだけに、加藤正夫十段にとっても強敵の登場だろう。G7とかいわれるタイトル戦の常連の一角をなんとか突き崩して、柳時薫の失冠でやや退潮ぎみの若手陣の失地を早いとこ回復してもらいたいものだ。
1998/2/9:
小林泉美二段、大魚を逸す。棋聖戦は、趙棋聖3−0と依田挑戦者を圧倒
前にも触れたとおり、NHK杯で、女流棋士として初めて三回戦に進出した、小林二段、名人、本因坊のタイトルを取ったこともある武宮九段の胸を借りることとなった。中盤、大石の死活を巡る大コウ争いになったが、武宮九段が大石の死活に関わるコウ立てしたのに構わず、コウをブチ抜き、大石同士の攻め合いに持ち込めば、手数は大差、泉美二段が、大勝していたというのだ(「週刊碁」)。わたしも1月18日に放映された際、その局面を見ながら、コウを解消すれば、少なくとも泉美二段有利の攻め合いに持ち込め、ひょっとすれば、勝つチャンスがあると思い、「抜け、抜け」と叫んだものだったが、結局は泉美二段、そのコウ立てを受けて大石の生きを図った。そのため、コウ材が一つ足らないことになり、コウ解消の代償に、上辺の数子を持っていかれ、300手を超す、大熱戦にはなったものの、8目半負けてしまった。まったく、惜しい一局であった。
女流と男性の対局では、女流側が、みずから中盤で崩れるような碁が多かったが、泉美二段は、なかなか土俵を割らず、結構粘れるし、単なる力碁ではないので、見ていても安心感があり、楽しめる。
武宮九段も冷や汗をたっぷりかいたことだろう。
泉美二段の今後の成長がますます楽しみになってきた。ところで、お父さんの小林光一九段、二週遅れて、四回戦の第一局に登場したが、娘の泉美さんの敗戦に気を落としたわけでもないだろうが、若手の羽根直樹六段にあっさり負かされてしまった。この直樹六段も、棋士の二世だが、お父さんの泰正九段より、冷静な勝負師で、これで準決勝進出を決めた。優勝まで後二勝、頑張ってもらいたいものだ。
ところで、棋聖戦、3局まで終わったところで、3−0と趙棋聖が挑戦者の依田九段を圧倒している。二日制の7番勝負の鬼といわれ、これまで24勝4敗と圧倒的な強さを誇る趙棋聖、さすがに強く、この三局とも、終わって見るとちゃんと勝つべき人が勝っていたという展開。こう打っていたら、挑戦者が勝っていたという図が局後、いろいろと出てくるが、その場で本人が打てない限りどうしようもない。そう、打てなくする、魔力が趙大三冠には、備わっているようなのだから、まず、その魔力から逃れるか、その圏外に身を置くしかないのであるが、丸二日、碁盤を挟んで対峙すると、だれしもその魔力圏に引きずり込まれてしまうものらしい。
依田九段にしても、こんなはずではないと思いながら、不本意な碁を打たされてしまう己に、戸惑うとともに、不甲斐なさで腹を立ててもいることだろう。「鬼」と言われることが、どういうことか、骨身にしみてわかって初めて、鬼に勝つことが、出来ようというものだ。この際、一局でも多く、「鬼」と二日間盤を挟んで対峙し、「鬼」のこわさを骨身にしみるまで味わい、魔力の圏外で自分の碁を打つ術を身に付けて欲しいものだ。
今年も大三冠の堅城は、なかなか崩れそうにない。
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1997/12/26:工藤紀夫九段、新天元に
57歳、私と同じ歳の新天元が誕生した。柳時薫七段を3-1で下しての快挙である。心からおめでとうと申し上げたい。工藤九段の碁は、明快でわれわれアマが並べるのに最適と聞いたことがある。たしかに、オーソドックスな碁で、あまりぎりぎりと音を立てるような碁ではないが、結構しぶとい。今期も、並み居る強豪を下して挑戦者に躍り出、みごと天元位をもぎ取ったのである。
対する柳時薫七段は、大変な不調で暮れの13番勝負を2勝8敗で、ことごとく破れ去った。
これで、今年の棋戦は全部終わったが、今年はタイトルがかなり移動した。十段、王座、天元と三つ。防衛は大三冠の棋聖、名人、本因坊に碁聖である。ベテラン陣が盛り返した年でもあった。
来年は、趙治勲に依田碁聖が挑戦する棋聖戦で始まる。これは相当面白くなりそうだ。
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1997/12/3:どうした柳時薫!
この時期は、ここ数年、柳時薫のシーズンであった。王座、天元のダブルタイトル戦を、毎年、持ち前の
粘り腰で堂々と乗り切っていたのだ。
ところが今年は、この10番勝負に加えて、棋聖戦の挑戦者決定三番勝負が加わって13番勝負になったの
だが、どうしたことか、これまで、1勝のみで7敗。すでに、王座を1−3で山田七段に奪われ、棋聖戦の
挑戦者も0−2で依田九段に取られてしまった。年間勝ち星でも、負け越しという最悪の状況にある。さ
て、0−2と追い込まれた天元戦5番勝負。巻き返しなるか。
とはいうものの、大器柳時薫のことだ。これを良き試練としていずれまた立ち直ってくるに違いない。こんな事も、長い囲碁人生の途上ではあるさ。
大三冠趙治勲に初の七番勝負を挑む依田碁聖には、新時代を開くつもりでの健闘を期待したい。
山田新王座は、関西から6年振りのタイトルホルダーである。なかなかの好漢であるし、碁の内容も面白
い。本因坊リーグにも初参加で二連勝中。一気に天下を取るつもりで暴れまくってもらいたい。趙治勲にし
ても、林海峰、小林光一、石田芳夫、武宮正樹、大竹英雄、加藤正夫にしても、その年代で大活躍をしてい
たのである。
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1997/11/25:小林泉美二段、橋本章二九段を破る!(NHK杯)
これは、囲碁史で特筆されていい出来事である。
NHK杯という桧舞台で、女流の二段が、かつてタイトルホルーダーでもあったベテランの橋本九段を白番で
下したのである。しかも、一回戦で、現役若手のパリパリの九段を破り、容易ならざる敵と考え、ふんどし
を締め直して登場した橋本九段を相手に、半目差を読み切っての堂々の勝利なのである。
解説の武宮九段も、気が付かないような好手を随所に放って、決め手を与えず、終盤、左下の折衝で、6子
を取り込まれたときは、敗勢に追い込まれたのではないか(武宮さんは、負けにしたと悲鳴を上げていた)
と思えた後も、半目差を読み切って冷静に打ち進め、見事に二回戦の壁を突破したのである。女流で二回戦
を突破したのは初めてではないだろうか。
よ
くやった!誰と対しても臆するところのない堂々たる対局態度がいい。次回は、今日の解説者の武宮九段が
相手である。いい試合をやってもらいたいものだ。
柳時薫は、二つのタイトル戦に加えて、棋聖戦挑戦者決定3番勝負と、三つの大舞台に掛け持ち出場と大
忙し。しかも、三つの棋戦で同時に角番に追い込まれてしまった。
天元戦で0−2工藤九段
王座戦で1−2山田七段
棋聖戦で0−1依田九段
この三棋戦に関する限り柳時薫の1勝5敗というのは、いささか気にかかるが、粘りを身上とする柳時薫の
こと、これからの巻き返しに期待しよう。
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1997/11/7: 名人戦趙治勲4-2で防衛。大三冠を二年連続維持。
{第22期名人戦}7番勝負となると滅法強い趙治勲が、第6局を制して、名人位を防衛し、
史上初めて大三冠を二年連続維持という偉業を達成した。さすがである。おめでとうございます。
小林光一九段もよく戦い、かつての強さに戻ったことを印象付けたシリーズだったが、勝ち碁をことごとく
勝ちきった全盛期の強さにはすこし陰りが生じている。もっとも、相手が、趙治勲だから、そうもいかない
面もあるのだが。
全6局、さすがに名人戦にふさわしい激闘の連続で、堪能させていただきました。両者に、お疲れさまと申
し上げたい。
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97/11/4 名人戦趙治勲名人3-2で小林九段をリード、王座戦、挑戦者山田規三生七段先
勝 、知念三段、女流本因坊位獲得
{第22期名人戦}お互いに黒番を入れあっての第5局、初めて白番の趙治勲名人が勝って、本シリーズで初
めて先行するとともに、史上初めての史上初めて大三冠を二年連続維持に後1勝と迫った。
いよいよ第6局が明5日から始まる。両者一歩も引かず、リング中央で打ち合うような戦いに次ぐ戦いの熱
戦が続いており、囲碁ファンなら誰しも第7局まで戦って欲しいと望むところであろう。カド番に追い込ま
れた小林九段、なんとか逆転で、名人位を奪って貰いたいものだ。趙治勲名人がいくら偉大とは言え、大三
冠を二年連続で許すようでは、他の棋士がふがいなさ過ぎる。頑張れ、小林九段。
{王座戦}王座戦挑戦者の山田規三生七段が、第1局を見事な打ち回しで勝ち切った。若手のホープと言
われるだけに、これまた若手の先陣を切っ王座、天元のタイトルを保持する若き実力者柳時薫を相手に、並
みのアマではちょっとついていけない超難解な攻防戦を制して幸先のよいスタートを切った。坂田名誉本因
坊も感嘆し、山田七段は「強くて粘っこいネ。将来天下を取るかも」と言ったそうだから、プロにとって
も、見応え十分な戦いだったようだ。
山田七段は、新人王戦では、女流としては史上初めて決勝に駒を進めた青木七段を2-0で激破、新人王にな
ったばかりだが、この勢いだと、王座を奪取しても、おかしくない。
柳時薫王座は、この6日から天元戦でも、挑戦を受ける。挑戦者が、工藤紀夫九段。われわれとほぼ同じ世
代の棋士の久々の登場である。柳時薫王座は、タイトル戦のかたわら、棋聖戦でも、挑戦者決定三番勝負
を、依田碁聖とう打たなければならない。強い人は、勝つから対局数も自然と増える。勝ち進んで、大一番
を経験するので、また、鍛えられて強くなる。
{女流本因坊戦} 楊嘉源八段には、小川会でお世話になっており、9月の例会のとき、知念かおりさんとの
結婚のお祝いを、彼女の女流本因坊戦の挑戦権獲得と妊娠のお祝いも併せて言ったのだが、その知念三段、
二度目の挑戦で、吉田美香女流本因坊を3-1のスコアで破り、おめでたの三重奏になった。おめでとう。お
おきなお腹を抱えての対局だったが、可愛い赤ちゃんを産んで下さい。
吉田さんは五連覇ならず。残念でした。
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97/9/22 名人戦第一局趙治勲の大錯覚で小林の逆転勝ち、王座戦挑戦者に山田規三生七
段
第22期名人戦が、いよいよ始まった。例によって第一局は海外対戦。今回はニュー
ヨークまで足を伸ばした。時間がずれているので、NHKの衛星放送でも、ちょうど
テニスやゴルフの中継のように、深夜や早朝に放映された。二日目は、朝早く起きて
テレビのスイッチを入れると、小林九段の勝ちになっていた。解説役の武宮九段が、
趙治勲の大錯覚による逆転勝ちとの解説をしていた。序盤の右上隅の攻防で白番の名人が用意した
コウによるシノギが絶妙で一気に優位にたち、もうどう転んでも名人の勝ちは、動かないと見られ
た局面での、大逆転だった。名人は、コウでしのいだ段階で、その後、およそ80手も後に現われる
右辺の石の死活について深く読みを入れ、それで大丈夫と思い込んでいたのである。それを前提で
打ち進め、相手が165と打った時点でその錯覚に気付いたのである。したがって164手目に錯覚に
気付けば何事にも至らなかったのである。錯覚に気付いた名人は「これでも名人か」と自分の頭を
殴り続けたという。打ち上げの席にも出ずに、一人碁盤の前に残り、石を並べ直しては頭を抱えて
うつ伏せになる映像を、衛星放送の囲碁ウイークリーが紹介していたが、見ていて鬼気迫るものが
あった。第一人者の執念を見せつけられた思いがした。
第一局が小林九段の勝ちで、面白くなったと言えようが、第一局では明らかに趙治勲の読みが上回
っていたように思えるので、勝負はまだ小林が苦しい。
王座戦挑戦者には山田規三生七段が、名乗りをあげた。若手のホープがいよいよ桧舞台に登場して
きた。山田七段は、新人王戦でも決勝に進出、女流としては史上初めて決勝に駒を進めた青木七段
に先勝、タイトル奪取まで後一勝のところまで来ている。スターに育って欲しいものだ。
1997/9/9 名人戦挑戦者に待望の小林光一九段登場、愛娘、泉美二段も大活躍
第22期名人戦の挑戦者に待望の小林光一九段が登場して来ましたね。これは、囲碁フアン
にとっては、願ってもないビッグプレゼントと言えるでしょう。大三冠を維持する趙治勲へ
のチャレンジャーとして、現在公式戦のタイトルは持っていないにしろ、やはり小林さんほ
どふさわしい人はいないと言うのが、衆目の一致するところ。奥さんの小林礼子六段を一昨
年なくして、棋聖、名人などのビッグタイトルをすべて失うなど、その後いささか低迷して
いましたが、今年になって鶴聖戦、龍星戦、世界選手権富士通杯と立て続けに優勝、完全に
復調し、今まさに絶好調と言えるでしょう。
一方の趙治勲も、本因坊戦では、加藤十段を一蹴して、高川九段の不滅といわれた九連覇に
並ぶなど相変わらず、安定した実力を示しており、いよいよこの10日から、ニューヨーク
で始まる第一戦から、見逃せません。
小林さんの愛娘,泉美二段も大活躍ですね。NHK杯では、中野九段を撃破するし、レディー
スカップでは、三連勝。まだ20歳,大成して欲しいですね。
97/6/23:本因坊戦七番勝負趙治勲四連勝で九連覇の偉業達成
予想通り、趙治勲が四連勝で九連覇の偉業を達成した。高川秀格の不滅と言われた記録に並んだことにな
る。心から、おめでとうと申し上げたい。
これからは、この記録がどこまで伸びるかが、興味の焦点になる。一口に九連覇というが、例えようもないほど長い歳月を、不敗で通したということを意味する。その精神力と精進には脱帽せざるをえない。今の
勢いでは、大三冠をこのまま維持しそうである。
名人戦は、終盤になって、2敗組みが5人という混戦状態になっている。武宮、王立誠、小林光一、片
岡、柳、の中から、誰が、抜け出て、挑戦者の名乗りを上げるか。はたして、大三冠の連覇を阻止すること
ができるか。こちらも、目が離せない。
97/6/11 本因坊戦七番勝負趙治勲三連勝で九連覇の偉業達成へ前進
趙治勲本因坊が第2局、第3局を連勝して、防衛まで後一局、九連覇の偉業達成はほとんど間違いないとこ
ろまで来た。挑戦者の対局過多からくる疲れを、今回星が一方的に片寄った原因にする人もいるけれど、た
しかにそれが否定できない面があるにしろ、やはり本因坊の盤面全体に描き出す構想力とそれを支える髪の
毛一本の差を正確にヨミ切る力とが、明らかに、挑戦者の力を上回っていることを認めざるをえない。加藤
十段に、この趙治勲本因坊を相手に、これから4番、タテに勝つことを期待するのはちょっと無理な気がす
る。もっとも、奇跡を願わないわけではないけれど。せめて、一勝はして欲しい。
ところで、この囲碁のコーナーが機縁でe-mail friendが、できた。見てくれている人はいるものなのです
ね。
97/5/27 本因坊戦七番勝負第一局、加藤十段、大見損じ。碁聖戦挑戦者に結城八段
本因坊戦は、いよいよ第一局が始まったが、わずか82手で加藤挑戦者が、負けてしまった。それも4時間も
余して、一分碁に追い込まれていた趙治勲に。局面はまさしく勝負どころで、ぎゃくになってもおかしくな
いところ、どうして徹底的に読まなかったのだろう。相手は百戦練磨の趙治勲である。そんなに簡単に勝た
せてくれるはずはない、とヨミを入れるべきであった。第二局からの巻き返しに期待したい。
ところで、その加藤十段を決勝戦で下し、関西棋院の期待を一身に背負って結城八段が碁聖戦挑戦手合い
の桧舞台に登場してきた。つい一月ほど前、十段位を加藤さんに奪われた手負いの依田九段は防衛に背水の
陣で臨むだろうから、熱戦が期待できよう。
97/5/5 いよいよ本因坊戦七番勝負始まる/小林泉美初段、大活躍
今、絶好調で、依田十段から半目差で、十段位を奪取して勢いに乗る加藤新十段が、大三冠王、
趙治勲に挑戦する本因坊戦七番勝負がいよいよ今月の12、13日始まりますね。加藤十段は、このところ週
に二局のペースで打たなければならないようですが、これも好調さを示すバロメーターで、今年になってか
らの成績は、20勝7敗、勝ち星では全棋士を通じてトップ。趙治勲にしても、せっかくの大三冠をやすやす
とは手放そうとはしないでしょうから、大熱戦が期待できそうですね。
ところで話は少し変わりますが、十代チャンピオン戦で、小林泉美初段が、若手のホープ、秋山次郎五
段、溝上知親四段を撃破して、準決勝に進出したのは、見事ですね。妻の礼子六段を亡くし、無冠になって
久しい父親の光一九段が、今期の名人戦でも、先週一敗同士の王立誠九段戦に敗れて一歩後退し、なかなか
ビッグタイトルの挑戦権をつかみかねている折、泉美さんの活躍は小林家になによりの明るいニュース。こ
うなったら、ぜひとも優勝して欲しいですね。
東洋証券杯では、小林覚九段が、韓国のイチャンホを破って、決勝戦へ進出し、是非とも今回はタイト
ルを獲得して欲しいと思っていたのですが、なんと三連敗で、韓国のソウ薫鉉九段に敗れてしまいました
ね。いい碁を打ちながら、最後のところで勝利をぽろりと手からこぼしてしまうような負け方は、碁に迷い
があるように、思えます。この迷いが吹っ切れれば、きっと一段の飛躍が期待できるのでしょうが。
大三冠を維持している趙治勲に挑戦するのは、絶好調の加藤九段に決まった。加藤九段は現在十段
位にも挑戦しているので、ダブル挑戦である。十段戦の方は、現在依田十段に1-2とカド番に追い込ま
れているが、せっかくのチャンス。少なくとも一つはタイトルを取ってもらいたいもの。本因坊位に三期就
いたこともあり、前々回も挑戦した実績からも、頑張ってもらいたい。一方の趙本因坊にしても、今回は、
高川秀格の9連覇に並べる可能性があるだけに、力を出すだろうから、どっちにせよ、白熱の好試合を期待
できそうである。わくわく。
西田栄美女流名人に、小川誠子六段が挑戦した第九期女流名人戦だったが、小川六段の闘志がいささか
空回りして、0-2のストレートで西田さんの初防衛を許してしまった。小川六段は、ちょっと攻め急いだ感
じがあったように思う。
西田名人は、NEC杯の俊英戦でも、若手の男性陣にまじって、決勝戦(惜しくも準優勝,優勝は楊嘉源七
段)まで行ったし、お子さんもできたし、碁でも私生活でも充実の時。今回の名人戦は出産休暇後の登場だ
ったが、ブランクを感じさせない余裕のある打ち振りだった。心から、おめでとうと申し上げたい。
小川先生、お疲れさまでした。今年中に是非また、桧舞台に登場して、次はタイトルを取って下さい。
十段戦は、加藤九段の充実ぶりがうかがえる第一局でした。この調子だと、久しぶりに、無冠返上の予
感がするのですが。
東洋証券杯では、小林覚九段が、韓国のイチャンホを破って、決勝戦へ進出しましたね。前回苦言を呈
したのですが、是非とも今回はタイトルを獲得して欲しいですね。
趙 治勲棋聖に小林覚九段が挑戦した今年の棋聖戦も終わってしまいましたね、4-1の一方的スコア
で。しかし、このスコア、2-3でもよかったはずで、いまごろ第六戦の戦いの真っ最中でもよかったはずと
思うのはわたしだけではないでしょう。挑戦者の小林覚九段の迫力不足には、はっきり言って不満で
す。
第4局にしても、第5局にしても、勝負所で、時間を余しながら、最善の手段を逸してずるずると敗戦に追
い込まれた局面を衛星放送の生の映像を見ながら切歯扼腕したものでした。勝負に対する執念という点で、
タイトルホルダーのほうが、数段勝っているように見受けられました。秒読みに追われ、悲鳴を上げながら
も最善を尽くそうとなりふり構わず頑張っているのに対し、挑戦者は少々あっさりしているように見えました。
第5局の勝敗を決めたといわれる左下隅の4、5目損をしたという寄せにしても、普段の小林九段であれば、
少々考えればすぐ読めたはずでしょう。われわれアマにしても何か反発できないかと考えるような形をして
いましたから。それがあっさり受けて後手になり、要所を次々に打たれての一目半負けでは何となく納得で
きません。
昨今、国際棋戦で日本は勝てませんね。これも、執念不足のせいのような気もするのです。カッコ良く、勝
負にこだわらない、投げっぷりがいい、勝負より美学、芸、石の心と言った従来の日本的な価値観は、国際
棋戦では通用しないようです。大いに勝負にこだわり、なりふり構わず、頑張って欲しいというのが、多く
の囲碁ファンの願ではないでしょうか。
[閑話休題]97/3/1に行われたNECカップ決勝戦に、囲碁教室に通っている妻が、教室の先生に切符をも
らって出かけたのです。その日ゴルフに出かけたわたしは、帰っても妻が留守なのでいったいどこへ出かけ
たのだろうと、首を傾げていたのです。夕闇迫るころ妻がにこにこ顔で帰って来ました。実は、NECカップ
を見てきたのだと件の話をしながら、大きな包を差し出すではありませんか。それは、わたしも欲しいと思
っていたデジタルブックでした。フロッピードライブ付でフロッピーに収められたソフトを開くと、歴代の
タイトル戦の棋譜を見たり、対局することもできる(もちろん、本も読むことができます)優れものです。
何と次の一手を当て、抽選にも当たったというのです。2000人で次の一手を当てたのは、34人、女性は自
分一人、デジタルブックに当たったのはそのうちの3人というのです。
妻が、一人でのこのこ公開対局を見に行くようになったこと、まあ、偶然とは言いながら、次の一手が当て
られるぐらいの棋力がついたこと、数年前までは信じられないことでした。
妻は、それ以降、ベッドの上でもデジタルブックを見ておりますので、現在の3級を抜け出すのも時間の問
題かもしれません。
ちなみに加藤九段と依田十段で争われたNECカップはこのところ絶好調の加藤九段が獲得したとい
うことです。近く十段戦の挑戦手合いがこの同じ組み合わせで開始されますが、興味津々です。
なお、女流名人戦第一局は、挑戦者の小川誠子六段の粘りが通じず、西田名人の先勝.小川さんは早
くもカド番に追い込まれました。頑張れ、小川先生!
俳優の山本圭さんは、囲碁ファンなら、ご承知のように小川誠子六段のご主人である。今日の午後、とある懇親会でその山本さんとお会いした。実に久しぶりのことであったが、一度だけお宅にお邪魔したことがあるのを覚えていて下さって、楽しくお話しすることができた。話は、当然小川誠子さんが、女流名人戦の挑戦者になったことに及んだ。挑戦者決定戦は、半目勝負だったが、「厚い半目だった」とのことであった。小川六段には、小川会でもお世話になっていることもあり、今度こそ、名人位を取ってもらいたいと思っている。今回はチャンスであると思う。是非、お伝え願いたいと申し上げた。いかにも、という風に山本さんはうなずいておられた。このところ、五回挑戦者になったが、ことごとく、実らなかった。「彼女は、根がやさしいもので、相手の方が、最後には、という思いで徹底的に粘って、投げてくれない」面もあるらしい。いずれにしても、呉清源九段に、見込まれ、NHKでも『21世紀の布石』の聞き役に登場している小川さんのこと、今度は名人位をものにしてもらいたいものだ。
97/2/7 棋聖戦第三局 、小林覚九段勝って1-2趙治勲
ヒアヒアしました。2/6のNHK衛星放送の午後6時までの分を帰宅後早速見たのですが、小林覚九段が4子を取る強行策に出ず、あっさり繋がらせたので、黒番の棋聖がひょっとしたら優勢になったかもしれないとの解説者の王九段のコメント。挑戦者の小林九段、三連敗では、天下の大三冠王を相手では、もうだめとしたものでしょう。深夜午前零時からの結果のわかる放送、祈るような気持ちでスイッチを入れたら、なんと中押で小林九段の勝ちとの第一声。ほっと胸を撫で下ろしました。これで、少し、面白くなりましたね。
注)97/3/23:今年は1月、2月の例会は都合がつかず、3月の例会が初参加。
98/7/3:趙善津九段に三子で中押負け
:有村女流インストラクターに二局中押勝ち
98/5/1:大森泰志七段に三子で中押負け
98/3/:大森泰志七段に三子で1目勝ち
97/11/15例会
宮崎志磨子三段に二子で中押負け
97/9/26例会
楊嘉源八段に知念かおりさんとの結婚のお祝いを言う。併せて、彼女の女流本因坊戦の挑戦権獲得と妊娠のお祝いも。
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97/5/16例会
楊 嘉源七段に三子で中押負け
小松英樹九段とは打ちかけ
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97/1/18:名人戦(5段以上)で三位入賞(スイス方式、私が第一局で当たって、まかされた人が、優勝した。)
注:毎年、この時期に行われる大会。三位はこれまでの最高位。
ワルシャワ滞在中、囲碁仲間と囲碁普及に乗り出し、教えた人の中から、ヨーロッパ選手権者も出た(クラシェック。当時大学生だった彼には星目で教えた)。彼は、世界アマ戦でも、青い眼で最高位を占めたこともある。
現在プロを囲む碁会に参加(三水会、小川会)。近所の碁会所にも毎週のように妻と連れだって、顔を出す。
『週刊碁』、NHK衛星放送の『囲碁・将棋ウイークリー』、『NHK囲碁選手権戦』、12チャンネルの『早碁選手権戦』の放映は見逃さない(ビデオ撮りをセット)。
妻も4年半前に始めて、現在3級(注)。燃えていて、週に二回近所のT囲碁クラブで開催される教室に顔を出す。先に、毎週のように妻と連れだって顔を出すと書いたのも、家に帰っても、夕食の準備が出来ていないためである。
次弟とは実力伯仲、末弟は三子の手合い。